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「若紫の君」源氏物語 ③

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「若紫の君」源氏物語 ③

本文

 「何事ぞや。童と腹立ちたまへるか。」とて、尼君の見上げたるに、少しおぼえたるところあれば、子なめりと見たまふ。「雀の子を犬君が逃がしつる。伏籠のうちに籠めたりつるものを。」と
て、いと口惜しと思へり。このいたる大人、「例の、心なしの、かかるわざをしてさいなまるるこそ、いと心づきなけれ。いづ方へかまかりぬる、いとおかしうやうやうなりつるものを。烏などもこそ見つくれ。」とて立ちて行く。髪ゆるやかにいと長く、めやすき人なめり。少納言の乳母とぞ人言ふめるは、この子の後見なるべし。
 尼君、「いで、あな幼や。言ふかひなうものしたまふかな。おのがかく今日明日におぼゆる命をば、何とも思したらで、雀慕ひたまふほどよ。罪得ることぞと常に聞こゆるを、心憂く。」とて、「こちや。」と言へば、ついいたり。
つらつきいとらうたげにて、眉のわたりうちけぶり、いはけなくかいやりたる額つき・髪ざし、いみじううつくし。ねびゆかむさまゆかしき人かな、と目とまりたまふ。さるは、限りなう心を尽くしきこゆる人に、いとよう似たてまつられるが、まもらるるなりけり、と思ふにも涙ぞ落つる。



「何事ですか。子供たちと喧嘩をなさったのですか。」と尼君が見上げた顔に少し似ているところがあるので、子供であろうと源氏はご覧になる。「雀の子を犬君が逃がしてしまった。伏籠の中に入れておいたのに。」といって、たいそう残念に思っている。この座っている女房は、「いつもの思慮が足りない犬君がこのようなことをして叱られるのは、本当に気に食わない。どこへ行ってしまったのでしょうか、だんだんとたいそう可愛らしくなってきていたのに。烏などが見つけたら大変だ。」と立って行く。髪がゆったりとしてたいそう長く、見苦しくない人であるようだ。少納言の乳母と人が言う方はこの子の世話訳なのだろう。
尼君が、「いやもう、ああ幼い。たわい無くていらっしゃる。私がこのように今日明日に思っている命を、貴方は何とも思わないで、雀を追いかける程度なのね。罰を被ることですよといつも申し上げるのを情けなく思います。」と言って、「こちらに来なさい。」と言うと座った。
顔つきはたいそう可愛らしい様子で、眉のあたりはほんのりと美しくかきあげた額の髪の様子はとても美しい。成長していく様を見てみたいと思う人であると目をお止めになる。というのは限りなく心を寄せ申し上げる人(藤壷の宮のこと)にたいそうよく似申し上げているので自然とじっと見つめてしまうのだなあと思うにつけても涙を落とす。



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